糖尿病腎症は、高血糖が続くことにより、毛細血管が集まっている組織の血管がダメージを受けて、ろ過機能が悪くなってしまう病気です。

糖尿病腎症の進行を早い段階で止めないと腎不全となり、血液透析を行わないと生命を維持することができなくなります。

糖尿病腎症

腎臓のはたらきについて

腎臓は、尿をつくる臓器として知られていますが、大きく分けると2つの働きを持ちます。

水分の調節

腎臓は、尿に出す水分を調節して、体の水分量を一定にしてくれる働きがあります。

糖尿病合併症によりむくむとすれば、腎臓の働きが落ちて水分を体外に出せなくなったからです。

正常な人は500ccの水分を摂れば、尿や汗で500ccが体外に出ることでバランスが取れていることになります。

しかし腎臓の合併症が進むんだ場合、体内に毎日少しずつ水分が溜まっていき、顔が腫れたようになったり、手足がむくむという症状が出るようになるので、むくんでいる状態が太ってしまったと勘違いしている人がいます。

しかし、これが太ったのかむくんだのか比較する方法として、足のスネの部分を押して指のあとが残るようならむくみが発生している証拠です。

初めは軽く始まるので気にならない人がいますが、徐々にゆっくりと進行して行き、1年くらいで足がパンパンに腫れ、象の足のように太くなります。

最高潮に達すると足が痛みだし、歩行にも支障が出るので、最終的には自分の手に負えなくなり、今まで治療していなかった人でも、しかたがなく病院を訪れることになります。

血糖値が高いのにもかかわらず、糖尿病の治療を全く受けていない人だと、統計上、約10年後には腎臓が悪くなり透析を受けることになるようです。

糖尿病腎症によりむくみの症状がでているのは、合併症が相当進んで手遅れになっている場合がほとんどです。

ただし、むくむがないから安心であるということでもないです。

老廃物の排泄

腎臓は、体に溜まってくる老廃物を尿の中に出すとともに、たんぱく質など必要な物質は外に出さないように保持する働きをします。

腎臓に障害がおこり働きが鈍ると、老廃物が排泄できなくなり、尿毒症という危険な状態になります。

老廃物は有害物質なので、その量が許容範囲を超えると、脳細胞を含めた全細胞が働かなくなります。

許容範囲を示すのが血液中のクレアチニン量で、正常値を超えると血液透析を受けなければなくなります。

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腎不全が進行すると透析治療がはじまる

腎臓は細かい血管で機能していて、糖尿病による血管障害の影響が著しく現れる臓器です。

糖尿病腎症の初期には症状がなく、検査でアルブミン尿やタンパク尿を指摘されるのみですが、腎症が進行して腎不全になると、だるい、疲れる、体がむくむ、貧血になる、吐き気がする、息苦しい、などの症状が現れ、心不全のリスクも高まります。

腎不全が進行すると、腎臓の機能を人工的に補うために、血液透析療法と言われる、いわゆる人工透析が必要になります。

透析治療は、1回あたり、だいたい約4時間の治療を週に3回程度行う必要があり、生活への影響が非常に大きいです。

しかし、透析治療を行う段階まで進んでいない場合には、血糖値のほか、血圧、脂質、肥満、禁煙など管理を行うことで腎臓の進行を予防することは可能で、腎症が明らかになった場合には、食事のタンパク質制限を行うことが一般的です。

検査結果値で腎症の進行状況を把握

糖尿病の合併症で腎臓が悪くなると、まず最初に尿アルブミン値が悪化します。

アルブミンは総タンパクの約67%を占める細かいタンパク質で、肝細胞でのみつくられ、血液中に存在していますが、血液のろ過装置である腎臓が障害されると、アルブミンが尿中に出現してきます。

腎臓は血管の集合体でできている装置なので、このアルブミンの出現が血管の早期の障害を教えてくれます。

ここで糖尿病腎症の病期分類と、その判定のための検査を示します。

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この表からもわかるように、重要なのは尿アルブミンの検査の値ですが、この検査は命に直結するという意味では、重要な検査です。

腎症第1期の時期に専門医を受診できていれば血液透析は回避できますが、第4期に入ってしまうと難しいです。

糖尿病患者の80%以上は自分がどの段階なのか知らずにいますが、これは病院でアルブミンの値を調べてもらうことで、どの位置にいるのかがわかりますので、気になる場合には専門医で調べてもらった方がよいです。

アルブミンは血液の中に最も豊富にある重要なたんぱく質で、通常は尿に漏れ出ることはないですが、腎臓が悪くなると少しずつ尿中に漏れ出る量が増えます。

正常値は一般的に検査基準値は18以下が正常値で、数値が301以上なら、合併症はかなり進んでいるといえます。

この表の数値を参考にして、あなたの合併症の改善に少しでも役立ててください。

血液透析がなくなったらどうなるか

腎臓が悪化すると最終的に血液透析が必要になります。

自分の腎臓が全く役に立たなくなったために、機械の力で水分調節と老廃物除去を行うことになります。

透析には週に3回、1回に3時間は必要で、これは大変な治療です。

糖尿病による血液透析患者数は、年間1万3000人です。

糖尿病腎症の悪化すると命に直結します。もしもこの世から血液透析がなくなった場合、この1万3000人は死に至るといっても過言ではないでしょう。

それだけ血液透析は重要な療法です。

糖尿病以外の病気が原因で透析を受けることになった場合、20年以上元気な人がかなりいますが、糖尿病の場合は、5年生存率が50%と言われています。

それだけ糖尿病による腎臓の合併症は命に直結する恐ろしい病気なのです。

できれば、まだその段階まで状況が悪化していないのであれば、血液透析の助けを借りないような生活習慣の改善が必要になるという事です。