糖尿病では網膜症だけが視力を損なう合併症ではない!

糖尿病では、3大合併症のひとつである網膜症をはじめ、白内障や緑内障など視力低下を伴う合併症を引き起こしますが、血糖値が高いのであれば、まず、それらの合併症が疑われます。

視力低下は、加齢や他の疾患によっても起こることもあり、早めに検査を受けて、原因を確かめておくことが大切です。

歳のせいだと軽く考えている方が多いようですが、取り返しのつかない事態になってからでは遅く非常に危険です。

糖尿病網膜症の症状を確認することは難しい

糖尿病患者の方は、目に関する合併症を気にしますが、症状が現れにくいことから、普段はそれほど意識されていないようです。

糖尿病網膜症になると、少しずつ視力が落ちて最後に失明すると思っている人が多いようですが、実際はそうではないです。

糖尿病の治療をしていなかった人の中には、それまで視力に全く問題がなかったのに、突然片方の目が全く見えなくなり、目の血管が切れて、眼底出血をおこし、あわてて眼科に行くというケースが多いようです。

一般的に、出血する前は全く視力に異常を感じないことが多いですが、出血が視神経の部分に達すると初めて目に墨が流れてきたような症状が現れ、出血量が多くなると全く見えなくなります。

しかしこれを気づくことは困難で、小さな眼底出血程度では症状が出ないですし、大きな出血の場合でも、視神経に近い部分でなければ気づくことがほとんどありません。

ヘモグロビンA1c値が5年以上、8.0以上が続くと、およそ50%の人に眼底出血がおきるといわれており、10年以上であれば100%に近い確率で現れます。

症状が現れないことで、何の根拠もなく自分は大丈夫と強がっている高齢の方が多いようですが、その保証はどこにも存在しません。

糖尿病網膜症が進行するとどうなるか

糖尿病網膜症は、高血糖が続いたことで目の毛細血管が出血して起こります。

眼球内に出血が広がると瞳孔から眼球に入った光が途中で遮断されて網膜まで届かなくなり、靄(もや)がかかったように視野がぼやけてしまい、やがて、網膜がはがれたり破れたりすると、視野が欠けることになります。

そのほかにも、目の前に黒い点がちらつく飛蚊症の症状が現れることもありますが、いずれにしても、このような症状が現れた場合にはかなり進行した段階です。



糖尿病網膜症は、出血や白斑などがあっても視力には影響が見られない単純網膜症
まれに視力低下などがみられるものの、ほとんど自覚症状がない増殖前網膜症
放置すれば失明してしまう増殖網膜症という、3つの段階を経て進行します。

単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症それぞれ解説します。

単純網膜症

単純網膜症では、細い毛細血管に小さな点状の出血や斑点が見られ、まだ軽い時期で治ることができる段階ですが、自覚症状は全くありません。

初期の単純網膜症では、小さな出血ならそれだけで自然に消えることもあり、点状出血があっても視力低下は起こりません。

単純網膜症は、血糖コントロールが治療の中心となり、半年に1度は眼科を受診をすすめます。

増殖前網膜症

増殖前網膜症では、糖尿病の治療が放置され網膜症が進行すると、網膜の細い血管が詰まり始め、網膜が酸素不足に陥り、だんだんと危険な状態になります。

この時期には、出血や斑点が広がってきますが、この状態になるとまだ自覚症状はありませんが、次の増殖網膜症に移行することは明らかです。

増殖前網膜症の段階では、眼球の外からレーザーを照射し、網膜の病変部を焼灼するレーザーによる光凝固療法がおこなわれます。

レーザーに光凝固療法は、新生血管の発生を防ぐほか、出血や白斑を消失させる効果があります。

増殖網膜症

増殖網膜症になり細かい血管が詰まり、今まで使用していた血管が使い物にならなくなると、酸素や栄養分を取りこむために新しい血管が必要になるので、バイパスの役目をする新生血管が作られます。

この新生血管は、壊死した細胞の機能をカバーするために、応急処置としてできた血管ですが、壁がとてももろいために簡単に破れて大出血を起こしやすく、硝子体にまで出血します。

この状態がひどいと網膜がはがれ、失明する危険性が伴います。

増殖網膜症まで進行して硝子体出血や増殖膜がみられる場合には、硝子体内の出血を吸引したり、出血のある硝子体や増殖膜を切除したりする硝子体手術が行われます。

糖尿病網膜症の判定は意外と簡単

糖尿病網膜症かどうかは眼底写真を見れば判定することができます。

眼底写真は目の奥の細かい血管を映し出すもので、糸のように細かい血管がたくさん走っている様子さえはっきりと映し出されます。

また、糖尿病網膜症の症状が悪化すると黒っぽくにじみ、血管が切れて眼底出血をおこしている状況さえもわかります。

元々目の血管は丈夫にできているので、眼底出血は糖尿病の人以外に起こることがないといわれますが、そんな丈夫な血管でも、糖尿病を5年以上放置すると、詰まったりぼろぼろになったりします。

まだまだある糖尿病網膜症

糖尿病網膜症による合併症の種類に、白内障と緑内障もあります。

白内障は、加齢によっても引き起こされますが、糖尿病では高血糖状態が続いた結果、目の水晶体の変性がおこり、水晶体が白く濁ることで発症する病気です。

一般的な老人性白内障が水晶体の周辺部から濁り始めるのに対して、糖尿病の人の白内障は水晶体の中心部や後ろのほうから濁ってくるのが特徴で、早期に視力が低下しがちです。

この症状としては、早い段階で視力低下などが表われることがあります。



糖尿病網膜症による緑内障は血管新生緑内障と呼ばれ、増殖網膜症が進行し糖尿病網膜症の末期に起こる合併症で、失明につながる可能性が非常に大きいです。

これは眼圧を一定に保ち、角膜、水晶体に栄養補給を行う房水の出口を新生血管が塞いでしまうために起こります。

房水は、目の中を巡回していますが、それが停滞してしまうことで眼圧が上昇し、視野の欠けや視力の低下に繋がり、放置すると失明の危険が高いので、すぐに治療が必要になります。