糖尿病の検査で血糖値よりもヘモグロビンA1cを重要視している理由

食事を摂った時の前と後とでは、血糖値は大きく変化します。

たとえば糖尿病患者の血糖値が、食事の前に 120mg/dl前後だとしても、食後には 240mg/dlなどに大きく跳ね上がります。

その数値を見た患者さんは驚きを隠せず、若干ショックを受けるわけですが、実際の治療に必要なのは、1~2ヶ月平均で血糖値がどんな状態だったかを表す数値なのです。

その数値を得る検査に、ヘモグロビンA1cという物質の量を測る検査があります。

ヘモグロビンA1c値には今までの不摂生さが現れる

ヘモグロビンは血液中の酸素の運搬をする物質のことですが、ヘモグロビンA1cはそのヘモグロビンに糖がくっついたものです。

これを調べる検査では、ヘモグロビン全体を100とした時、糖がついたヘモグロビンがいくつあるかを%(パーセント)で示しています。

ヘモグロビンA1cの正常値は、5.8%未満ですが、血糖値が高くなるとどんどん上がり、血糖コントロール良好といわれるのは、6.5%未満です。

血糖値

血糖検査をする際に、検査のために朝食を抜いて来たという人、また、明日は糖尿病の検査だからといって前日から急に食べるのを制限する人がいます。
食事を摂ってきても摂ってこなくても、現在ではヘモグロビンA1c値は変わりなく現れるので、意識する必要はありません。

ヘモグロビン値から過去の成績がわかるので、日ごろの不摂生があれば、この検査に全て表われることになります。
前日に食事を制限するのではなく、常日頃から食事を制限するように心がけてください。

このように、ヘモグロビンA1c値には12ヶ月間の血糖値の平均的推移が反映されているので、前日にいきなり正常な生活を送っても無意味なほど糖尿病の状態を見るのには理想的です。

あなたの病院ではヘモグロビンA1c値の検査をしてくれすか?

ヘモグロビンA1cを知らずに糖尿病の治療は難しいことがわかってきましたが、実は、ヘモグロビンA1cの検査を全くしないお医者さんもいるようです。

もしも検査した病院が血糖値しか測っていないとしたら、あなたの身に危険が生じる可能性があるので、なぜヘモグロビンA1c値の検査を行わないのか、お医者さんに尋ねてみたり、あるいは病院を変える必要があるかもしれません。

ヘモグロビン値が下がれば治療がうまくいき血糖コントロールが良くなってきた。上がれば悪化してきた。と判断できるわけですが、今では、全世界的に糖尿病の血糖コントロール状態はこのヘモグロビンA1c値で評価でき、ほとんどの人は血糖値のことばかり気にするようですが、血糖値は参考程度にしかならないほどです。

わずか6分ほどで測定値を出すことができる優れた機械があるので結果がすぐにわかります。

最近は年1回の健康診断でも、ヘモグロビンA1c値が調べられているくらいで、糖尿病はそれほど重大な現代病であることがわかります。

厚生労働省の指針では、ヘモグロビンA1c値が5.6%以上であれば、境界型か糖尿病と考えられ、ブドウ糖負荷試験が必要になります。

6.1%以上であれば糖尿病の可能性が高く、その場合には 1ヶ月以内に受診することが望ましいです。

今でも検査紙を使用して尿糖を測っている所もあり、治療に関しては無意味なのですが、糖尿病を見つけるという点では意味があり、尿糖が(+)であれば、50%以上の確率で糖尿病と言えます。

ヘモグロビンA1cがどのくらいの数値で、インスリン療法を開始するのか

ヘモグロビンA1cがどのくらいの数値で、インスリン療法を開始するのか気になる方もいると思いますが、その目安はですが

血糖コントロールが「不可」の状態であれば、インスリン療法を開始した方がよいです。

ヘモグロビンA1c値でいうと、8.0%以上に該当します。

血糖値

これは、早朝空腹時血糖値では160mg/dl以上、食後2時間血糖値で220mg/dl以上に相当します。

ただし、インスリン療法に早めに取り組んだ方がすい臓の回復も早く、そののちインスリン注射を打たなくても済むようになる場合があることもわかってきていますので、ヘモグロビンA1cが7.5~8.0%程度であっても、インスリン療法をすすめる場合があります。

ヘモグロビンA1cが7.5~8.0%でも、食事療法や運動療法、あるいは経口血糖値降下薬による治療の効果が現れて、数値が改善傾向にあれば、インスリン療法は必要ないと判断できますが、逆に数値に改善が見られない場合には、インスリン療法を始めた方がよいかもしれません。

これに関しては様子を見ながらお医者さんと相談して決めていくことになります。