死の恐怖は人の意識を変えるスイッチ
私は現在58歳。
若いころから健康志向で、バドミントンという過酷な競技に打ち込み、ランニングによる体力づくりもしていました。
当時は「動いていれば健康になれる」それが当たり前だと思っていました。
しかし年齢を重ねるにつれ、同じように努力しても体が反応しなくなる現実に直面することになります。
40歳の時に不整脈を発症し、死の恐怖におびえながら、いつも朝を迎えていました。
朝になり、生きている自分を確認できると「今日も生きている!」・・・と、そのことにものすごく感動していました。
なぜそのように思っているのかというと、友人が29歳の若さで同じ不整脈で亡くなていたから、自分もそうなるのではないかと、すこし自覚していたからです。
それ以来、健康と人生の時間の使い方について意識して生きてきました。
激しいランニングからゆるいジョギングに変えたのもそのひとつで、それ以来大きな不整脈が起こることはなくなりました。
煙草をやめた25歳以降、風邪ひとつひいたこともなく、インフルエンザの予防接種すら受けていません。
ジョギングは健康を維持することも、ダイエットに有効なことにもつながっていることは確かです。
昔は、嫌で嫌で仕方がなかった長距離を走ることが、今では時間があれば、1日8km程度走るほどの大事な日課の行事に組み込まれています。
別に「ジョギングをしましょう!」と言っているわけではなく、これは私に合った健康を維持するための手段です。
人それぞれ好き好きがあるし、合う合わないがあって当然です。
強制もするべきではありません。
それでも、、、歳には勝てなくなってきた自分がいる・・・。
あの封筒を開けるのが、毎年怖かった
健康診断の結果が郵送で届く季節になると、しばらく封筒を開けられずにいました。
テーブルの上に置いたまま、見ないふりをして2~3日が過ぎる。
妻に「また放置してる」と言われて、ようやく重い腰を上げる。それが毎年の習慣でした。
開けた後の気持ちも、毎年同じでした。
「去年よりまた悪くなってる」
「先生のコメントが年々厳しくなっている」
「わかってはいるんだけど・・・」
そして封筒をそっと引き出しにしまい、また来年まで見なかったことにする。
これが、58歳のサブ(庭師の甘党おやじ)が、毎年繰り返してきた儀式です。
数値で見る、太っていた頃の自分
少しこんな私について、具体的な話をさせてください。
食べ方を変える前、私の健康診断の数値はこんな状態でした。
中性脂肪が基準値の上限をはるかに超えていました。
基準値は150mg/dL以下とされていますが、私の数値は毎年200~230mg/dLあたりをうろうろしていました。
お医者さんから「脂質異常症の一歩手前ですね」と言われたこともあります。
腎機能も年々低下してきて、これは厄介だと感じました。
LDLコレステロール、いわゆる「悪玉コレステロール」も高めでした。
基準値は140mg/dL未満とされていますが、私は150~160mg/dLで推移していました。
血圧も少し高め。収縮期血圧(上の数値)が135~140mmHgくらい。
これも「正常高値」という、正常でも異常でもない微妙なゾーンに毎年います。
空腹時血糖も、油断できない数値でした。
正常値は100mg/dL未満とされていますが、私は毎年100~110mg/dLをうろうろしていました。
「境界型」と呼ばれる状態で、糖尿病一歩手前のサインだと後から知りました。
「どれか一つだけ悪い」ならまだ気楽でいられます。
でも軒並み「ギリギリ」や「やや高め」が並んでいると、なんとも言えない重苦しさがあります。
先生からは毎年「体重を減らしてください、食事に気をつけてください、運動してください」と言われ続けました。
「わかっています」と答えながら、何も変えられなかった。その繰り返しでした。
数値が悪くなる「本当の理由」を知らなかった
当時の私は、なぜ数値が悪いのかを正確には理解していませんでした。
「太っているから」
「食べすぎているから」
「運動していないから」
そのくらいの認識でした。でも「なぜ太ると中性脂肪が上がるのか」「なぜ血糖値が高めになるのか」という仕組みは、まったく知りませんでした。
知らないまま「なんとかしなければ」とだけ思っていたので、やることが的外れになりがちでした。
カロリーを減らそうとして、ご飯の量だけ減らす。でもおかずは変えない。
間食のチョコレートも変えない。煎餅もクッキーも「少しくらいなら」といって結局食べ続ける。当然、数値は変わりませんでした。
後になってわかったことですが、中性脂肪を上げる最大の原因の一つは「糖質のとりすぎ」です。
脂っこいものを食べすぎることだと思っていましたが、実は糖質が体内で処理しきれないと、余った分が中性脂肪に変わるのです。
甘いものや白米、パン、麺類を食べすぎると、血糖値が上がります。
血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌されます。
そのインスリンが、余った糖を脂肪に変えて体内に蓄えます。
その脂肪の一部が中性脂肪として血液中に増えていきます。
つまり私が毎日当たり前のようにバクバク食べていた「白米・甘いコーヒー・チョコレート・煎餅」の組み合わせが、中性脂肪を上げ続けていた原因の一つだったのです。
脂っこいものを減らすより、糖質の「量とタイミング」を変える方が効果的だと知ったのは、食べ方を変え始めてからずいぶん後のことでした。
食べ方を変えてから、何が変わったか
57歳から「ゆるい糖質制限」を始めました。
厳密に糖質を計算するわけでも、甘いものを完全にやめるわけでもありません。
ただ、次の三つを意識するようにしました。
食べる順番を変える。野菜やタンパク質を先に食べて、ご飯は最後に少しだけ。
夜のご飯を減らす。茶碗に軽く半膳にする。おかずはそのまま。
甘い飲み物をやめる。缶コーヒーをブラックに変える。
それだけです。激しい運動はしていません。膝が痛いのでジョギングも再開していません。食べるものを極端に制限したわけでもありません。
それでも、体重は少しずつ落ち始めました。
封筒を開けるのが怖くなくなった日
食べ方を変えて約1年後の健康診断の結果が届きました。
いつものようにテーブルの上に置いて、しばらく見なかった。妻が「今年は早く開けなよ」と言いました。おそらく私がここ数ヶ月で見た目が変わっていたのを、彼女なりに感じていたのだと思います。
封筒を開けました。
中性脂肪が128mg/dLでした。基準値内です。去年まで200を超えていたのに。
LDLコレステロールが118mg/dLでした。こちらも基準値内。
血圧が上122mmHg。正常域に入っていました。
空腹時血糖が94mg/dL。初めて100を下回りました。
先生のコメント欄に、こう書いてありました。
「各数値が大幅に改善されています。この調子で続けてください。」
毎年「体重を減らしてください」と書かれていた欄に、初めて「この調子で続けてください」と書いてあった。
正直に言います。少し、涙が出そうになりました。
妻に結果を見せたら「なんで泣きそうになってるの」と笑われました。でも笑いながら、「よかったね」と言ってくれました。
数値が改善されて、初めてわかったこと
健康診断の数値が改善されて、気づいたことが一つあります。
数値が悪かった頃、私はどこかで「もう歳だから仕方ない」と思っていました。50代になれば中性脂肪や血圧が高くなるのは当然で、あとは薬でコントロールするしかないのだ、と。
でもそうではありませんでした。食べ方を変えるだけで、50代後半からでも数値は動くのです。
身体は、ちゃんと応えてくれます。
あきらめていた自分が少し恥ずかしくなりました。と同時に、もっと早く知っていればよかったとも思いました。でも「早く知っていれば」と考えても仕方ありません。55歳から始めて、56歳で変わった。それで十分です。
今年の封筒の話
今年も健康診断の結果が届きました。
封筒を受け取ったその日に開けました。去年と同じくらい、良い数値が並んでいました。先生のコメントは「引き続き維持してください」でした。
テーブルの上に放置することなく、その日のうちに引き出しにしまいました。怖くないから、すぐにしまえるのです。
こんな小さなことが、こんなに気持ちいいとは思いませんでした。
最後に
この記事では、私が実践した食べ方の変え方については詳しく書きませんでした。「何をどう変えたか」の具体的な話は、別の記事にまとめています。
ただ一つだけ言えることは、特別なことは何もしていないということです。
「甘いものをやめなさい」とは言っていません。
「毎日走りなさい」とも言っていません。
「カロリー・糖質量を細かく計算しなさい」とも言っていません。
もちろんこれらはやったほうはよいのでしょうが、ただ、食べる順番と、食べるタイミングと、飲み物を少し変えた。それだけで、あの数値が動いたのです。
健康診断の結果を引き出しの奥にしまい込んでいる方に、この話が届いてほしいと思っています。あなたの体も、きっとまだ応えてくれるはずです。