腎臓は体内の血液をろ過し、不要な老廃物を尿として排出するほか、ブドウ糖やアミノ酸など必要な成分を血液へと再び吸収する役割があります。
腎臓には毛細血管が集まった「糸球体」といわれる、血液をろ過して必要な成分を再吸収し、老廃物を尿として膀胱に送っている重要な機能を持ったろ過装置があります。
この機能が正常に働いていることで私たちは通常の生活を送ることができていますが、高血糖が続くことで糖尿病腎症という弊害が発生するようになります。
糖尿病腎症の進行が進むと、腎機能が著しく低下して腎不全となると生命を維持できなくなってしまうので、人工的に血液をろ過する人工透析が必要になります。
糖尿病腎症の原因
腎臓にある糸球体は、毛細血管が集まってできている組織のため、高血糖が続くと糸球体の毛細血管の壁が厚くなり内腔が狭くなります。
これが詰まると血液が流れなくなり、血管がダメージを受けて、血液をろ過する機能が悪くなるのが、糖尿病腎症です。
正常な糸球体では、水や電解質、老廃物だけを通過させ、たんぱく質や赤血球、白血球などはろ過しません。
しかし高血糖が続くと、この糸球体の血管が狭くなるとともにろ過機能が低下して、尿にたんぱく質が出るようになり、糖尿病腎症を発症します。
糖尿病腎症の症状
糖尿病腎症は、いくつかの段階を経て進行して行きますが、自覚症状が少ないため、気づかないうちにたんぱく尿が出現し腎機能が徐々に低下していきます。
糖尿病腎症は、糖尿病発症後、10年以上経過したころに現れやすく、さらに障害が進むと、老廃物を処理できなくなり、高血圧やむくみや倦怠感などが現れます。
初期であれば食事制限をしたり血糖と血圧をコントロールすることで腎機能の回復が見込めますが、糖尿病腎症の進行を早い段階で止めないと、進行が進むと最終的には尿をつくることができない「無尿」という状態になります。
そして腎機能が著しく低下すると腎不全となり、人工的に血液をろ過する人工透析が必要になり、透析をしないと生命を維持できなくなってしまう場合があります。
糖尿病腎症の治療
現在、新たに血液透析を受けることになった患者さんたちの原因の第1位が、糖尿病腎症です。
糖尿病腎症が進むと、それまでの食事療法に加えて、腎臓に負担をかけない食事療法が必要になります。
腎機能が低下した人に行われる食事療法を「低たんぱく食」といいますが、たんぱく質を多く摂ると腎機能に負担がかかりますが、人工透析を受けるような体にならないためにも、医師や栄養士の指導のもと、たんぱく質の摂取制限を行うようになります。
糖尿病腎症を早期発見するには
糖尿病腎症は、自覚症状が少ないため、気づかないうちにたんぱく尿が出現し、腎機能が徐々に低下していくので発見が遅れます。
初期には糸球体からたんぱくが尿中に漏れ出し、尿検査で「アルブミン尿」や「たんぱく尿」が診断されますので、早期発見をするためには、尿中の微量アルブミンを調べる必要があります。
糖尿病腎症は、糖尿病発症後、10年以上経過したころに現れやすく、糖尿病神経障害や糖尿病網膜症よりも発症の期間が長いといわれます。
2型糖尿病では発病の時期が正確にはわからないので、血糖コントロールの良否に関わらず、年1回は尿微量アルブミン検査を受けることが望まれます。
糖尿病腎症に進行しないために、定期的に尿検査を受けて、異常を早期に発見することが大切です。