光は、角膜、水晶体、硝子体を通って網膜に届き、その情報が視神経から脳に送られ、この仕組みによって物を見ることができます。
網膜は目をカメラにたとえるとフィルムに当たる部分で、栄養や酸素を運ぶための毛細血管がたくさん集まっています。
網膜の黄班部は、特に視力が高い部位で、高血糖により網膜の毛細血管が障害されると、糖尿病網膜症を発症します。
高血糖が続くと、網膜に集まっている毛細血管が詰まったりしてダメージを受け、網膜に酸素や栄養が行かなくなると血流が悪くなったり、血管が閉塞したり、細く破れやすい新生血管ができ出血したりします。
一般的に糖尿病発症からの期間は、糖尿病神経障害よりも長く、糖尿病発症後、5年から10年が経つと、目の網膜の毛細血管が傷ついて糖尿病網膜症がおこりやすくなります。
糖尿病網膜症の進み方
網膜の毛細血管は少しずつ障害されていきますが、初期には自覚症状がほとんどありません。
しかし、「単純網膜症」から「前増殖網膜症」を経て「増殖網膜症」へと3段階に進んでいくにつれて、網膜の毛細血管が詰まったり、出血したり、網膜がはがれる網膜剥離などがおこり、その結果、視力が低下したり重症の場合には失明することもあります。
単純網膜症
網膜の毛細血管がもろくなって小さなこぶのようなふくらみができ、そのこぶが破れると眼底に点状の出血ができます。
出血した血液成分が網膜上に溜まると、周囲との境界が明瞭な硬性白斑ができます。
単純網膜症の治療は、自覚症状は見られないですが、この時に血糖コントロールを行っていれば、点状出血は自然に消えりこともあります。
前増殖網膜症
網膜の毛細血管が詰まって、その先に酸素や栄養が届かなくなると、血液成分がしみ出し血流が障害されて、周囲との境界が不明瞭な軟性白斑ができます。
多くの場合、自覚症状は見られないが、視力低下を感じることもあります。
前増殖網膜症の治療は血糖コントロールと同時に、進行を抑えるために患部をレーザーで焼いて出血を止める光凝固などが行われます。
増殖網膜症
血流が途絶した部分に新たな血液を送るために、異常な新生血管が作られます。
この時、網膜に発生した細くてもろい新生血管が破れると、出血や網膜剥離がおこります。
出血が硝子体に及ぶと視力が低下します。
新生血管が作られる際にできた増殖膜が網膜を引っ張ると、網膜剥離から失明を起こすことがあります。
増殖網膜症の治療は、レーザー治療により出血を除去したり、はがれた網膜を元に戻す硝子体手術が行われます。
失明を防ぐために糖尿病網膜症を意識して早期発見
現在日本では、成人してからの失明の原因の第2位が糖尿病網膜症によるもので、年間3,000人が糖尿病網膜症によって失明しているとされます。
視力低下があっても気づかないことが多く、また自覚した時には進行していることが多いものです。
血糖値を良好に保ち、予防に努めることが第一ですが、初期なら血糖コントロールで改善しますが、症状が進んでしまった場合の治療はレーザー光線で網膜を焼く凝固治療や硝子体手術などが必要です。
硝子体の濁りや網膜剥離は手術で治る確率が高いのですが、視力の回復には個人差があります。
早期発見のために自覚症状がなくても半年から1年に1回は眼科で眼底検査を受けるようにした方がよいです。